情報処理安全確保支援士制度・登録手続き

情報処理安全確保支援士制度の概要

情報処理安全確保支援士制度の全体像

1.登録可能な者

情報処理安全確保支援士試験の合格者が登録対象者となります。ただし、以下の欠格事由に該当する人は登録を受けることができません。

  • 精神の機能の障害により情報処理安全確保支援士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
  • 情報処理の促進に関する法律、刑法のウイルス作成罪・取得罪、不正アクセス禁止法の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して2年を経過しない者
  • 登録を取り消された日から起算して2年を経過しない者

2.登録簿の公開

情報処理安全確保支援士制度は登録制で、登録者の氏名、生年月日等を記載した登録簿が作成され、経済産業省に備えられます。必須項目(登録番号、登録年月日、支援士試験に合格した年月、講習の修了年月日)以外の項目の情報公開は本人の任意です。

3.更新制度

情報処理安全確保支援士制度では、資格保持者の継続的な知識・技能の維持を図るため、3年ごとに支援士登録者に指定講習の受講を義務付ける更新制が導入されています。この義務に違反した者には登録の取消しなどの措置がとられます。

4.支援士としての義務遵守

支援士の質を担保するために、登録者には以下の義務が課せられることが規定されています。

  1. 定期的な講習の受講
  2. 信用失墜行為の禁止
  3. 秘密保持(※義務違反者に対する罰則あり)

5.有資格者用のコミュニティの構築

同じ士業同士の情報交換、勉強会等相互啓発を通じた自己研鑽の場を設けるために、以下の取り組み等が検討されています。

  • 有資格者向けの定期的な業界の第一人者を招いたシンポジウムやカンファレンスの開催
  • 有資格者向けのSECCON(セキュリティ技術を競う大会)の開催
  • 有資格者向けの損害賠償保険等の創設・運用
  • 有資格者向けのセミナー・勉強会・交流会を開催

登録手続きについて

支援士の登録申請は通年受け付けておりますが、登録日は次のとおり年に2回です。

支援士の登録申請については以下のIPAのページに詳しく説明されています。また登録に必要な書類のPDF、書類への記入方法などが説明されている「登録の手引き」を手に入れることが可能です。
 https://www.ipa.go.jp/siensi/toberiss/index.html

【上期登録】 登録日:10月1日 (申請の受付期限:7月31日(当日消印有効))
【下期登録】 登録日: 4月1日 (申請の受付期限:1月31日(当日消印有効))

登録申請書類①~⑧に記入してIPAに対して簡易書留で提出することで登録申請を行います。支援士登録には登録手数料10,700円と登録免許税9,000円を合わせた19,700円が必要です。また登録後の登録事項変更料は900円です。

新規登録に必要な書類

新規登録に必要となる書類一覧とチェックポイントです。①,②,⑤,⑥についてはIPAホームページにPDF形式で公開されています。「登録の手引き」で確認しながら準備しましょう。

①登録申請書
この書類だけはパソコンで入力、またはすべて手書きのどちらかを選択できます。
パソコン入力を希望するのであれば、まず自分の機器に"パソコン入力用申請書PDF"をダウンロードし、"Adobe Reader"上で編集します。そして印刷した申請書の自署部分を手書きし、押印します。
手書きであれば、"手書き用申請書PDF"を印刷し、必要な項目をすべて手書きで記入して、押印します。
さらに2ページ目に郵便局等で購入した9,000円分の収入印紙と、登録手数料10,700円の振込を証明する書類を貼り付けます。登録手数料の振込先は登録の手引きのP7に記載されています。
②誓約書
必要事項を記入後、押印します。
③情報処理安全確保支援士試験合格証書のコピー
手元にある合格証書をコピーします。
④戸籍の謄本若しくは妙本又は住民票の写し
市区町村役場で取得します。3カ月以内に発行されたものを1通提出します。(マイナンバーの記載が無いものに限ります)
⑤登録事項等公開届出書
1枚目の公開する事項にチェックを入れ、自署で記名押印します。さらに2枚目が登録情報公開についてのアンケートになっているため、続けて記入します。
⑥登録申請チェックリスト
必要事項を記入後、押印します。

これらの書類一式を簡易書留でIPAに送付することで登録申請が完了します。以下の住所が宛先です。申請書類の到着後1カ月程度で受理通知および交付までのスケジュールが記載された「受付メール」が届くようです。

〒113-6591
東京都文京区本駒込2-28-8
文京グリーンコートセンターオフィス15階
独立行政法人情報処理推進機構
IT人材育成本部HRDイニシアティプセンター
情報処理安全確保支援士グループ登録係

申請書類の到着後1カ月程度で受理通知および交付までのスケジュールが記載された以下の「受付メール」が届きます。

登録日当日に情報処理安全確保支援士登録証と講習受講計画がIPAより送付されてきました。

講習の受講義務と内容について

資格を維持していくためには、IPA又はIPAが認定した事業者が実施する①オンライン形式の講習を年1回受講するとともに、3年ごとに②集合講習を受講する必要があります。

オンライン講習
自宅や職場で受講可能な講習で、PCを使用して1年ごとに1回(標準学習時間:6時間)受講します。主に最新の知識や倫理を培うことが目的で、動画や音声などを含まないテキスト・静止画ベースのコンテンツを使用する形式で行われます。オンライン講習はA,B,Cの3種類があり、集合演習からの経過年ごとに受講する講習が決まっています。
オンライン講習A:最新知識のインプット
オンライン講習B:技能の強化
オンライン講習C:基礎の再確認と集合講習への反転学習
集合講習
対象者を会場に集めて1回6時間かけて行われる講習で3年ごとに1回受講します。オンライン講習の習熟度の確認および講義・ケーススタディによるグループ討議などの形式で知識・技能・倫理の3科目を受講します。開催場所については決定しておらず、公式ページでも"登録状況を考慮して決定(関東以外の開催も予定)"という情報に留まっています。また、情報処理安全確保支援士の質を定期的に担保するために、習熟度確認などにおいて一定レベルに達していない者に関しては再度受講させるなどの措置がとられることが予定されています。

講習のスケジュールですが、登録日を起点として、オンライン講習を毎年1回、集合講習は3年に1回受けることが義務付けられます。ただし、試験合格日から登録日までの期間が3年を超える方は、 登録日から1年以内に、オンライン講習を1回受講し、その後集合講習の受講が必要です。計画通りに受講した人には講習修了証が交付されます。また、講習実績がIPAホームページで公開されることになっています。

気になる講習費用についてはオンライン講習が1回2万円、集合講習が1回8万円に決定しました(2016/11/30発表)。つまり3年ごとに最低でも14万円(1年あたり4万7千円程度)の資格維持コストが求められます。

普及のための施策案

情報処理安全確保支援士制度が実用的なものとなるためには、制度の認知度が増し、企業等から適切な評価を得られるようにすることが重要です。報告書では以下の普及策が提案されています。

  • 情報処理安全確保支援士が担う役割の明確化
  • 情報セキュリティを担う人材のキャリアパスの確保・メリットの付与
    • わかりやすい通称・呼称(例えば登録情報セキュリティスペシャリストなど)を用意し、世間一般に普及させる
      →公式の通称として登録情報セキュリティスペシャリスト(登録セキスペ)が設定されました。
    • バッジ等の身分を示すノベルティを制定する
    • 他のセキュリティ資格等との相互認証を行う
  • 有資格者のコミュニティの構築
  • 支援士制度を活用した情報セキュリティ対策推進への働きかけ
    • 情報処理安全確保支援士やその他情報セキュリティ関連資格を有する者を活用し、情報セキュリティ対策を推進している企業に対する認定/表彰制度の創設
    • 情報処理安全確保支援士が監査等を担った商品・サービス等に対する認定制度の創設
    • 一定の業務分野に関する、情報処理安全確保支援士等の実践的な能力を有する人材の配置の義務化
    • 企業等が保有する有資格者数等の情報公開の推進
    • サイバーセキュリティ保険における有資格者数の要件化
    • 政府調達における有資格者の参画の要件化
  • 産学官連携による継続的な人材育成のエコシステムの構築

上記のうち気になる施策は「配置の義務化」でしょう。試験WG第2回要旨には、「今後、経済産業省として、必置の義務化なりリコメンドを進めていこうとしている中…」という記述があるように特定の組織における「配置の義務化」も検討されているようです。ただ続く第3回WG要旨では、

現時点で国内に何名いるか不明な段階でいきなり必置を義務化すると、企業等も混乱してしまう。まずはガイドライン等で活用を推奨するといった活動を考えていきたい。

という意見に収束されているように、必置化は普及状況を見ながらの検討課題に留まる見込みです。しかし実現すれば資格の価値や需要が一気に高まりそうです。

関連資料へのリンク

平成28年11月30日 IPA 国家資格「情報処理安全確保支援士」講習のご案内
http://www.ipa.go.jp/siensi/koshu.html
平成28年10月21日 経済産業省 支援士制度概要(PDF形式:316KB)
http://www.meti.go.jp/press/2016/10/20161021002/20161021002-1.pdf
平成28年10月21日 経済産業省ニュースリリース
「情報処理安全確保支援士」制度を開始しました(PDF形式:133KB)
http://www.meti.go.jp/press/2016/10/20161021002/20161021002.pdf
平成28年10月19日 電子政府(e-GOV)
政令案・省令案に対するパブリックコメントの結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000149832
平成28年9月9日 電子政府(e-GOV) 情報処理の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に対する意見募集について(政令案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000148323
平成28年6月27日 プレス発表
“情報処理安全確保支援士”と現行の情報セキュリティスペシャリスト試験の位置付けについて
http://www.ipa.go.jp/about/press/20160627.html
経済産業省 産業構造審議会 商務流通情報分科会 試験ワーキンググループ
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/32.html#shiken_wg
平成28年1月15日 試験WG第1回配布資料
資料4 情報処理安全確保支援士制度(案)(PDF形式:777KB)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/shiken_wg/pdf/001_04_00.pdf
平成28年2月25日 試験WG第2回配布資料
資料 情報処理安全確保支援士制度(案)(PDF形式:532KB)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/shiken_wg/pdf/002_01_00.pdf
平成28年3月25日 試験WG第2回配布資料
情報処理安全確保支援士制度の普及策(PDF形式:438KB)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/shiken_wg/pdf/003_01_00.pdf
平成28年4月27日 試験ワーキンググループ中間取りまとめ
(概要)(PDF形式:326KB)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/shiken_wg/pdf/report_01_02_00.pdf
平成28年4月27日 試験ワーキンググループ中間取りまとめ
~情報処理安全確保支援士制度~(PDF形式:1,078KB)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/shiken_wg/pdf/report_01_01_00.pdf
平成28年2月2日閣議決定 情報処理の促進に関する法律の一部改正案(PDF)
http://www.cas.go.jp/jp/houan/160202/siryou2.pdf

本記事内容は上記の関連資料を基に執筆したものであり、本文内の文章・図表にはこれらより引用したものが含まれています。


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